第20話「入るを量りて出を制する」

最終話となれば、やはりバブルという時代にもう一度触れなければならないと思う。近頃会う20代~40代のビジネスマンでもバブルの頃の話はほとんど知らない人が大半だ。

しかし、昭和61年から平成3年頃までにあったバブルの時代はオランダのチューリップバブル・アメリカ西海岸の不動産バブル等と同じように経済歴史に残る出来事だと思う。

だから、第1話のスタートに「家族が一番」というタイトルでバブルの世界に身を置いていた雨宮という不動産業者の話を書いた。

10年以上前から現在にそしてオリンピックを目指して今後も日本橋界隈・丸の内周辺そして銀座・赤坂・新宿・渋谷・池袋そして大阪・名古屋等大都会は建て替えを中心として建築ラッシュである。

坪当たりの建築資金もバブルのピークを超えているだろう。現在首都圏のアパート・マンションの空き室率は30%を超えている。地方等の空き室率は50%を超えてしまっている所も多いのだ。

それでも銀行はオーナーの先の行き詰まりが見えているのに、アパートローン等を加速させて建てさせ続けている。

D建託のように自社のファイナンスを使わせて、とんでもない場所に建てさせているケースも少なくない。

バブルの時ももう危ない、このままでは行き詰まると感じていた経営者はかなりいたのだが、撤退・縮小・中止を決断する勇気を持っていない。

もう一度物件を転がして儲けてからやめよう等と都合のいいことを考えて先送りにした。

そして金融機関はそれを後押しして貸しまくった。あのバブルの後半、他の金融機関が貸付を増やしていた頃、自分の会社の貸付金を回収に走ったら、他の金融機関からの借入でかなりの回収が可能だったと思うが、人間は皆で渡れば怖くないの言葉通り、大半の金融機関は洪水のように貸し続けた。

良識のあるバンカーがもうやめましょう、回収しましょうと正しい意見を進言しても無能な上司や目先の欲に眩んだ経営者達は、「そんな勇気のないことだから君は駄目なんだ」とか、「そんなことでは他行に得意先を取られてしまうだろう」と、正しい意見を言う人間を軽蔑するだけでなく大銀行の某頭取は、向こう傷は問わない等、恰好のいいことを言って貸し続けた。

最後はこれはダメだと気が付いたのだろうが、自分達の失敗と責任を認めたくないためと、隠蔽の為に解決を先送りをし始めたのだ。

それは山一證券の破綻や、ノンバンクの倒産等で分かる通りである。

現在の建築ラッシュは大都会が中心だが、バブルの時代は全国津々浦々までに及んだのだ。
荒らしてしまったリゾート地・自然の破壊は凄まじかった。

近年は外国人観光客が年に2,000万人を超えて地方のリゾート地でも息を吹き返した場所はあるが、しかしそれは一部である。

大半はもう朽ち果てるのみだろう。

地方のリゾート地と言われた場所をドライブしてみると、誰も住まない別荘地や腐って潰れそうな別荘や元お土産店が山ほどある。

大型の店舗やホテルでも何十年も放ったらかしにされて見る影もないものは数知れずだ。

ガラガラの空き室のアパートやマンションの状況を見ても金を貸し続ける一方で、家賃10年保証・20年保証等と甘い言葉でオーナーを誘っている企業も増えている。

しかし、そんなやり方は先が見えている。どんなに資金が用意されていても永遠に保証することは出来ない。既に自転車操業の状況でもあるのだ。

しかし、近頃のニュースでも見る通り、大手都市銀行のこれから数年のリストラの計画は凄まじいものがある。店舗の閉鎖・統合も数知れずだ。

それでも都市銀行はまだ外国を相手にしたりと、いくつか生き延びる作戦はあるだろうが、地方銀行はどう生き抜くつもりなのか。先がみえているが、アパートや安物の建売業者に融資をすることをやめようとはしない。

もっとも今、撤退の計画をたて始めても遅いだろう。

リゾート地だけでなく、地方の町の空地や売地が増え続いているのは恐ろしいばかりだ。
すでに全国で空き家800万軒ともいわれているのだ。

しかし、人間がそれぞれ生活をしていくという事、そして便利とスピードという都合のいい日常を求め続けるというのは、先のことはどうでもいい、目の前の利益を追い求めるということになってしまうのか。

原発問題についてもいえるだろう。福島原発の被害ではまだ何万人も家に帰ることが出来ない状況だ。

子供達の体の異変にしても判断の決着がついていないのに、政治家や金に群がる権力者や経営者などは原発推進を声高々に叫んでいる。

そういう人間は自分の子供や孫の世代に安全を残そうとは考えないのか。自分のいる間に金と権力を握ればあとはどうなろうと構わないのか。

銀行はマイナス金利の中で本業の金を貸して金利を受け取り収益を上げていくという、当たり前のビジネスが成り立ちづらくなっている。

メガバンクでも利益の半分近くが手数料(投資信託・外貨建保険等)である。これは健全ではない。

それらの投資商品についていえば、高齢者の預金を狙って甘い言葉と泣き落としで内容を理解できていない高齢者にサインをさせているのだ。

これは銀行内のプレッシャーがきつい為、行員もノルマを達成するためにかなりの無理を自分にもお客にもかけているのだ。

行員の中には何倍もの難関を突破して入社し、本来の金融業務に夢と希望を持っていたはずが、昔あった豊田商事事件と同じような年寄りをなだめすかして契約をとることに嫌気がさしている者も少なくない。

現にこんな汚れた仕事は出来ないと、泣く泣く銀行を辞めた女性や男性社員もいるのだ。

私が長い間つき合っていた3大メガバンクの一つである銀行の担当社員はHといってとても感じのいい男性であったが、彼からしつこく営業されて元本保証の保険だというので申し込みをしたことがある。

私もプロだから、そんなものはあるわけがないのではと尋ねたが、あくまでも元本保証だと主張するので、銀座支店のお客様対応の部屋まで行った。

息子を受け取りにしたので同行した。

挨拶をしたらそばに中年の女性がいて、それは某保険会社の人間であった。Hは息子と私に改めて説明を始めた。私を廊下に出し、息子だけに説明するという。

だが、1,000万の金は私のものだ。そう主張して聞かせてもらったが、元本保証等という言葉の説明も信用しづらいが、間違いなく元本保証でしょうねと再三訊ねると、Hはこれまで元本割れしたことのない保険ですし、元本保証のようなものです、と苦しい答弁になってしまった。

支店長までが出て来て不安はない、と口説かれたが、私はきっぱりと断った。

外に出た時、22歳の息子が

「お父さん、Hさんは暑くもないのに顔に汗をかいていたね」

と言った。

顔を紅潮させて汗をかきながらしゃべり続ける、あれは悪徳不動産屋と同じ類の表情であった。普段は人の好さそうなHも支店での成績を上げるためにああならざるを得ない。

高齢者に限らないが、銀行・証券・保険会社はもちろん、どんな業種でも大手〇〇という看板を持っていようとお客は油断してはならない。

現在日本の人口は減り始めていることは確かなことだ。

そんな中で外国からの実習生の悲しい話がある。東南アジアや中国等から日本語を学んで多額な借金(これは受け入れる日本側にも大きな問題がある)をして希望に胸をふくらませてやって来る実習生と称する若者達の話だ。

引き受けた衣料品や建築関係等の子受け、孫受けの中小企業の中には長時間奴隷のように働かせ、時給は400円程度とし、アパートのひと部屋に4~10人も詰め込んで、部屋代と称して3万~4万円を給料から差し引き、休日は年に数回程度という考えられない状況で働かせている経営者達が少なくない。

その実習生が1時間に1着作ったものが大手アパレルの店先で1着1万円~2万円で売られている。

あまりの酷さに堪りかねた実習生がNPO の助けを借りて交渉しても、会社は金がない、あげくに弁護士を入れて逃げ回る。

実習生に対する弁護士の「法律上は問題ない」の冷たいひと言と、経営者夫婦の居直った態度で、「もう国へ帰れバカ野郎」という言葉には、せっかく日本を目指して来た若者たちにどう見えるのだろう。

一方でおもてなし等と聞こえのいい言葉を使って外国人観光客を呼び込んでいるが、残酷に扱われた彼らが帰国したら日本人のことを日本という国のことを何と説明するのだろうと思うと、人口が減る、どうするかと悩んでいる国がこんなことに目をつぶっていていいのかと今更ながら情けない。

経済発展著しい日本で外国人観光客をオリンピックまでには、3,000万~4,000万人にしようとしているならば、その陰で酷い目に遭っている外国からの実習生の問題は1日も早く解決するべき課題だ。

だが、人口減少問題は日本にとっては深刻なことだが、地球全体でみれば人口は増え続けている。食料問題はもちろんだが、水を安定して確保していくことは至難のわざになる。

国と国との争いの原因に水の争奪戦がなることはもうそんなに遠くない気がする。

水や食料といった生きるための基本の問題が解決されない中で、大分前からカード等を利用してキャッシュレスという現金を持ち歩くことがない社会はすでに始まっている。

それが今凄まじい速さで進行してきている。カード・スマホはもちろん、ビットコイン等に代表される仮想通貨も欲望に火をつけて普及し続けている。

ITによる発展でロボットもかなりのスピードで人間の職場を奪い取ることだろう。このような動きは止めようがない。

しかし、どんなに精巧に作られたものでも、人間の持っている喜怒哀楽に代わることは出来ないはずだ。

もちろん、それらを覚えさせて反応させることは出来るだろうが、目と目を見て話しをし、言葉に発していない内面の心まで読み取り、気遣い、愛する、悲しむ、喜ぶ、時には羨み嫉妬し、憎むなどの感情を身につけていくのは人間同士のコミュニケーションしかない。

だから、どんなに周囲にスマホやロボットを置いて退屈はしない。1人で平気だと思っても、人との会話を忘れてはならない。

それは、オギャーと生まれた赤ん坊の時からだ。両親は話しかけ続けて、家族のコミュニケーションを育てなければならない。

近頃は表情が乏しく、声に抑揚のない大人に会うことは少なくない。もちろん、マニュアルに沿った笑顔やサービスは街中に溢れているが。

ビジネスで会っても、私達の世代が感じていた熱いものというか、「人間ていいよね」と言えるような瞬間が減ってきている。そう考えるのは私の勝手な思い込みなのだろうか。

まだまだこれからもビットコインなどの新しい仮想通貨や決済、借入方法等想像を超えるお金の世界が次から次と生み出されてくるだろう。

技術が進みIT(人工知能)やそれを利用したロボットがあらゆる分野に進出してきている。

それらは生活する上で人間の労働を楽にするという役目はもちろんあるが、結局目的は1人ひとりの人間から利益を生み出すためのものだ。

いわゆる資本主義の最前線が様変わりしたということであって、各個人の懐具合が豊かになったということではない。

忘れてはならない、人間が主役で人間が生きている世界なのだ。どんなにロボットが代わりをしてくれて、慰めてくれて少しは気持ちを軽くしてくれたとしても、孤独や痛みや愛や情、そして妬み・憎しみはなくならない。むしろ高まるかも知れない。

だから、周囲の便利なものを使用すること、情報を正しく選択する能力、利用する判断は自分しかいないのだ。

どんなに情報が入って来てもそれを的確に判断する能力と、臨機応変に行動する勇気を持たなければ情報はなんの意味もなさない。

現に情報をどんなに取れても、それを判断するのは個人の能力だ。

毎日のようにニュースが流れ、銀行の窓口やATMの前でも振り込め詐欺についての注意がなされていても、引っかかる人間が減ることはない。

知識が豊富なのよりも、想像力や知恵を育てることだ。人間は会って顔を見て話す。お金は現金という手元で数え、感じる事の出来るものでありたい。

電子マネーといっても、個人の収入が増えたわけでもなければ、支出が減るわけでもない。

単に便利になったということだけなのだから、お金に対する考え方はこれまで話をしてきたように、基本のルールとマナーを厳守しなくてはならないのだ。

便利を否定するものではない。ただ、人間の感情を通じ合わせることは不便なくらいがかえって高まり、育つのではないかと思える。

便利というスイッチを入れるほどのわずかな時間で着いてしまうものには温かさや、やさしさと気遣いは、回数多く使えば使うほど希薄になって、最後は消滅してしまうのではないかという気がする。

お金の世界は何百年も前から変わらない。今こそ冷静に判断をしてほしい。

私の持論は、「戦争の起きていない国に住み、自分の足でトイレに行けて、食事がおいしく食べられたらそれが最高の幸せ」ということだ。

日本はその言葉が当たり前のように通用する国だ。

しかし、今や戦争はいつ起きるか、または巻き込まれるか分からない。交通事故や病気で自分の足でトイレに行くことが出来なくなる事だってありうる。

病気になり食事制限されたり、物価高騰の中で買うお金がなく食物さえ手に入れることが出来なくなることもあるかも知れない。極めて近い将来お金がなければもちろんだが、お金があっても必要な食べ物を手に入れることが難しくなることはあり得る。

だから、成熟した資本主義国である日本で生活している者として、お金というものを見つめ直してもいいと思う。

資本主義国家で生きると言う事は、自分の稼いだお金で自分の愛する者を養い、守るということだ。

最後にこの記事を書く切っ掛けを話しておこう。

サラ金会社がメガバンクに吸収されたとき、政府は大手の銀行がやるならば、以前のサラ金地獄のようなことは起きないと考えたのだろうが、いざ銀行がカードローンとして始めると、あっという間に以前と何も変わらず、一般勤労者はもちろん、特にシニア層と若者に多重債務者・自己破産が増え続けてしまった。

そこで、それらについての警鐘としてこの20話を作り上げた。

そのため、起業して会社を作るとか、独立して店を持つ、アイデアを駆使して金を稼ぐ等という話にはほとんど触れていない。

それよりも1人ひとりに大切な基本となる、信頼すること、信頼されることや、儲けるという字は信用する者と書くという信念を書いたものだ。

日本は国の借金が恥ずかしながら世界一ともいえる国だ。国だって小さな1人ひとりの懐だって金に関して言えばこれ以外の健康的な方法はない。

「入るを量りて出を制する」

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